家庭での衛生管理は健康を守る上で非常に重要です。特にウイルスや菌などが原因としての病気が気になる時期には『次亜塩素酸ナトリウム除菌水』は強力な味方となります。
しかし『塩素系』と聞くとその扱いに不安を感じる方も少なくないと思います。
この記事では『次亜塩素酸ナトリウム除菌水』の効果と正しい作り方そして安全に使用するための注意点をわかりやすく解説します。
次亜塩素酸ナトリウムとは?
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は強いアルカリ性であり、ハイターやブリーチといった塩素系漂白剤の主成分として使われているものです。衣料品などの漂白効果の他にウイルスや菌などの除菌効果があるとして広く利用されています。また、水道水の消毒にも使われるなど意外と身近にある成分でもあります。
どんなウイルスに効果があるのか
では、次亜塩素酸ナトリウムはどんなウイルスに効果を示すのでしょうか。
ウイルスと言ってもたくさんの種類がいますが、大きく分けると『エンベロープウイルス』と『ノンエンベロープウイルス』という2種類のウイルスが存在します。
代表的なウイルスの分類表
エンベロープウイルス | ノンエンベロープウイルス |
---|---|
インフルエンザウイルス | ノロウイルス |
コロナウイルス | ロタウイルス |
ヘルペスウイルス | アデノウイルス |
風疹ウイルス etc… | ポリオウイルス etc… |
エンベロープとは脂質性の膜のことで、エンベロープウイルスはカプシドと呼ばれるタンパク質の層とエンベロープ(脂質性の膜)に覆われた二重構造になっています。

エンベロープウイルスはこのエンベロープ(脂質性の膜)が破壊される事で感染力失います。そしてこのエンベロープ(脂質性の膜)はアルコール消毒や石鹸による手洗いで壊すことが可能です。
それでは『ノンエンベロープウイルス』はどうでしょうか。ノンエンベロープウイルスには名の通りエンベロープ(脂質性の膜)が存在しません。
エンベロープ(脂質性の膜)を破壊することのできないノンエンベロープウイルスはカプシド(タンパク質の層)を破壊しなくてはなりません。このカプシド(タンパク質の層)ですが一般的に販売されている消毒用アルコールでは効果が薄く、石鹸による手洗いに関しても、洗い流すことはできても破壊することが難しいとされています。
そんなノンエンベロープウイルスに対して強い効果を示すのが『次亜塩素酸ナトリウム』となります。
〇効果あり △効果が薄い
除菌対策一覧 | エンベロープウイルス | ノンエンベロープウイルス |
---|---|---|
アルコール消毒 | 〇 | △ |
次亜塩素酸ナトリウム | 〇 | 〇 |
石鹸など(界面活性剤) | 〇 | △ |
熱湯(85度以上で90秒以上) | 〇 | 〇(時間長めを推奨) |
乾燥 | 〇 | △ |
間違わないで!次亜塩素酸水との違い
『次亜塩素酸ナトリウム』に似た名前で『次亜塩素酸水』というものがありますが、次亜塩素酸ナトリウムとは別物となりますのでご注意ください。この記事では『次亜塩素酸ナトリウム』を使った除菌水の紹介となります。
次亜塩素酸ナトリウムがアルカリ性であることに対して、次亜塩素酸水は酸性となりますので似た名前ではありますが混合するようなことは絶対にしないでください。
次亜塩素酸ナトリウム除菌水の作り方
次亜塩素酸ナトリウムは原液のままでは刺激が強すぎる為、用途に合わせて水で希釈して使用する必要があります。しかし、次亜塩素酸ナトリウムの原液の濃度は製品によって異なり、水で希釈する割合も製品によって異なります。
ここではドラッグストアやホームセンターなどで比較的手に入りやすい塩素系漂白剤(ハイターやブリーチなど)を使った希釈割合を紹介します。
※ノロウイルス対策などにも有効として推奨されている濃度と希釈割合
消毒対象 | 推奨される塩素濃度 | 希釈割合 |
---|---|---|
ドアノブや手すり、床など | 0.02%(200ppm) | (水)1L:4ml(次亜塩素酸ナトリウム) |
野菜・調理器具 | 0.02%(200ppm) | (水)1L:4ml(次亜塩素酸ナトリウム) |
便や嘔吐物の処理 | 0.1%(1000ppm) | (水)1L:20ml(次亜塩素酸ナトリウム) |
ペットボトルを使った除菌水の作り方
計量カップが無い場合などは500mlのペットボトルを使用した希釈方法が簡単で作りやすいです。
用意するもの
塩素濃度約0.02%(200ppm)の除菌水を作る場合
- 500mlのペットボトルに水を半分入れる。
- ペットボトルの蓋に塩素系漂白剤を半分(約2ml~2.5ml)入れ、それをペットボトルに入れる。
- ペットボトルの中が500ml程度になるまで水を入れる
※塩素濃度約0.1%(1000ppm)の除菌水を作る場合は塩素系漂白剤をペットボトルの蓋で2杯分(約10ml)入れる
次亜塩素酸ナトリウム除菌水を使用する際の注意事項
酸性タイプのものとは絶対に混ぜない
これが最も重要な注意点ともいえるでしょう。酸性のものと混ざると有毒な塩素ガスが発生し危険です。製品に『まぜるな危険』との表示があると思います。使用上の注意を改めて確認すると共に、絶対に酸性のものと混ざらないよう気をつけて使用してください。
事前に汚れを落とす
次亜塩素酸ナトリウムは、油分やタンパク質など汚れが残っていると殺菌効果が低下します。効果的に除菌するためには、石けんや洗剤で汚れをあらかじめ洗い流しておくことが重要です。
使用後の水拭きと換気
次亜塩素酸ナトリウム除菌水で消毒をした箇所は必ず水で拭き取るか、流水で十分に洗い流してください。特に金属製品は塩素成分が残ると腐食の原因となる可能性があります。
また、いずれの作業中も常に窓を開ける、換気扇を回すなどして換気を徹底してください。最低でも吸気口と排気口の2カ所の換気口を確保し、密閉された空間での作業は絶対に避けて下さい。
保管方法と使用期限
次亜塩素酸ナトリウムは光や熱、時間経過によって殺菌効果が徐々に低下していきます。明確な使用期限はありませんが、半年から1年程度での交換が望ましいようです。
- 遮光性のある容器(濃い色のボトルなど)に入れ冷暗所で保管する。
- 作り置きした除菌水はなるべく早く使い切る。
- 古くなった塩素系漂白剤などは使用しない(殺菌効果が薄れている可能性がある)。
スプレー噴霧は避ける
希釈液をスプレーボトルに入れて空間に噴霧すると、気管や肺に入ってしまう危険性があるため推奨しません。また、目に入ると最悪失明する可能性もあります。
次亜塩素酸ナトリウム除菌水の使用方法
ドアノブや手すりなどの消毒に使用する場合
- 推奨された濃度(0.02%)で作成した次亜塩素酸ナトリウム除菌水を清潔な布に含ませる
- 消毒したい箇所を除菌水を含ませた布で拭き上げる
- 再度、水で湿らせた清潔な布を使って消毒した箇所を拭き上げる(塩素成分を残留させない為)
食器や調理器具などを消毒する場合
- 食器や調理器具が浸かる量の水で、推奨された濃度(0.02%)の次亜塩素酸ナトリウム除菌水を作成する
- 油汚れ等を食器用洗剤でしっかりと落とし、よくすすぐ(酸性の洗剤を使っている場合は混ざらないよう注意する)
- 食器や調理器具を除菌水に10分程つける
- 除菌後は水でよくすすぎ清潔な布などで拭きあげるか、清潔な場所(除菌したトレー等)で乾かす
まとめ
次亜塩素酸ナトリウム除菌水の作り方と注意事項を紹介していきました。
アルコールや他の除菌剤に比べると作成する手間や、作成後の使用期限など使い勝手の悪い点もありますが、除菌効果は非常に高く、使い方さえ間違わなければ心強い見方となります。
使用する際、特に注意するべき点としては
- 酸性ものとは絶対に混ぜない
- 必ず換気をおこなう
- 用途に応じての推奨希釈濃度を守る
- スプレー等で噴霧しない
これらの事を守って安全な除菌対策をしていきましょう。
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